
設備が動くときと動かないときがあります。
リレーは「カチッ」と動いていて、導通もありました。それでもまた止まります。何を見ればいいんでしょうか?

「カチッと動いた」「導通した」は、その瞬間・その場所の情報です。それだけで正常とは判断できません。
私もエレベーターの保守で、リレーは動いて見えるのに接点側の接触不良で次の動作へ進まない故障を何度も経験しています。
設備が「動いたり動かなかったりする」とき、原因の候補として名前が挙がりやすいのが接触不良です。
ただ、接触不良は確かめたその瞬間に正常な値を示すことがあり、一度の測定で白黒をつけようとすると判断を誤りやすい不具合でもあります。
この記事では、接触不良の意味と原因をおさえたうえで、測定結果をどう読み、「どこまで正常か」をどう切り分けるかという判断の順番を中心に解説します。
この記事でわかること(10秒でチェック)
この記事の結論
一度の導通・抵抗・電圧だけで、接触不良かどうかを決めないことが大切です。
「どこまで正常か」を順番に確認し、原因の範囲を狭めてから対処を選びます。
⚠️作業時の最重要安全ルール
・通電中の厳禁: 部品の交換や抵抗・導通の測定は、必ず機器の電源を切って(ブレーカーを落として)行ってください。
・設定の確認: テスター等の計測器を使う際は、測定対象に合わせた正しいレンジ(電圧・抵抗など)になっているか必ず確認してください。
➕ 【重要】ご一読ください:安全上の注意と免責事項(タップで展開)
この記事の内容は、あくまで筆者の20年以上の経験に基づく一般的な知識と手順を紹介するものです。
電気工事や保守作業には、感電・火災・機器の破損といった重大な危険が伴います。実際の作業は、必ず自己責任で、関連法規と安全規則を厳守して行ってください。
また、資格が必要な作業は必ず有資格者が行ってください。
当ブログの情報に基づいて生じたいかなる損害・事故についても、当方は一切の責任を負いません。
今の状況から確認する
接触不良は一度の測定だけで判断しない
結論から言うと、動いたり動かなかったりする不具合が接触不良によるものかどうかは、一度の導通・抵抗・電圧測定だけでは判断できないことがあります。
接触不良は、電気がまったく流れなくなる故障とは限りません。
接触の状態が動作のたびに変わると、電気が流れるときと流れにくいときが入れ替わり、設備は「動いたり動かなかったり」します。
そのため、次のような一つの結果だけで正常と決めつけるのは危険です。
これだけで正常と判断しない
- 今は動いている
- テスターで導通した
- リレーが「カチッ」と動いた
- 電圧が測れた
どれも「確かめたその瞬間、その場所では問題が見えなかった」という情報にすぎません。
現場で大切なのは、症状・再現性・測定結果・回路上の位置を組み合わせ、「どこまで正常か」を順番に確かめて原因の範囲を狭めることです。
再現性とは、同じ条件で同じ症状がまた出るかどうかのことです。
そして、原因の範囲が絞れてから、清掃・再接続・端子の処置・部品交換といった対処を選びます。
「接触不良っぽいから交換しよう」「接点復活剤を吹いておこう」と先に手を動かすと、原因が別の場所にあった場合に、同じ症状がまた出ることになります。

接触不良は「疑う」ところまではすぐにたどり着けます。
手間がかかるのは、「ここまでは正常」と言える範囲を一つずつ広げていく作業のほうです。
この記事では、その順番を中心にお話しします。
接触不良とは?どんな症状が起こるのか
接触不良とは、電気が通るべき接触部分(リレーの接点、端子、コネクタなど)で電気的な接続状態が悪くなり、電気が流れにくくなったり、通らなくなったり、場合によっては通電が不安定になったりする状態です。
「接触部分」と聞くとスイッチやリレーの接点を思い浮かべがちですが、電線をねじで固定する端子、差し込んでつなぐコネクタ、リレーを差し込むソケットも接触部分です。
電気の通り道のうち、部品どうしが「触れ合って」つながっている場所は、どこでも接触不良の候補になります。

接触抵抗とは
接触部分で生じる電気の流れにくさのことです。
オムロンの用語解説では、接点どうしが触れ合う境界の抵抗に、可動片や端子など導体そのものの抵抗を合わせた値として説明されています。
接点の表面にできる酸化物や硫化物などの膜(接点皮膜)は、この抵抗を大きくする原因になります。
では、接触抵抗が高いとどうなるのか。
接触部分の抵抗が大きい状態で電流が流れると、そこで電圧降下が生じ、負荷(モーターやランプ、次のリレーのコイルなど、電気を使って仕事をする側)に届く電圧が下がります。
流れる電流が大きい回路では、接触部分そのものが発熱することもあります。
接触不良が起きると、次のような症状が出ることがあります。
- 電気がまったく通らず、機器が動かない
- 動くときと動かないときがある
- 何度か操作すると動く
- 負荷に届く電圧が下がる
- 接触部分が発熱する
- 誤動作する
ただし、接触不良が起きれば必ずこれらの症状が出るわけではありません。
どの症状が出るかは、接触部分の状態、流れる電流の大きさ、回路の作りによって変わります。
反対に、同じ症状が接触不良以外の原因(電源電圧の低下、コイルの不良、配線の断線、制御信号の異常など)で起きることもあります。
症状は「接触不良を候補に入れるきっかけ」であって、決め手ではありません。
では、なぜ「動いたり動かなかったり」するのか。
理由は、接触の状態が一定ではないからです。
接点表面に皮膜や汚れがある場合や、接圧が不安定な場合には、接触状態が一定にならず、動作ごとに通電状態が変わることがあります。
端子のゆるみやコネクタの差し込み不足など、接続部分が不十分な場合も、通電が不安定になることがあります。
接触不良が起こる主な原因
接触不良の原因を細かく挙げると数多くありますが、現場で考えるときは次の3つの系統に分けると整理しやすくなります。
- 汚れ・酸化・腐食:表面の膜や異物で流れにくくなる
- 摩耗・劣化:接点そのものが傷み、接圧も落ちる
- 端子・コネクタ・配線側の接続不良:ゆるみ・差し込み不足・圧着不良など

【1】接点表面の汚れ・酸化・腐食
接点の表面に酸化膜や硫化膜ができたり、ほこりや異物、開閉時の火花(アーク)で生じた炭化物が付いたりすると、金属どうしが直接触れ合いにくくなります。
オムロンの「リレー 共通の注意事項」では、高温多湿の環境での長期間の使用や放置、硫化ガスやシリコーンガスのある環境、ほこりの侵入などが、接触不良の原因として挙げられています。
また同資料では、ごく小さな電流しか流れない回路(微小負荷)で、しかも開閉の回数が少ない使い方では、接点表面に膜ができて接触が不安定になるため、定期的に通電して確認するよう注意されています。
測定器メーカーのFlukeも、スイッチやリレー接点の抵抗は、はじめは非常に低く、摩耗や汚れで時間とともに大きくなると説明しています。
【2】接点の摩耗や接圧不足
接点は開閉を繰り返すうちに、機械的にすり減る「摩耗」や、火花や熱による「消耗」が進みます。
接点どうしを押し付ける力が足りなくなったり、部品の位置がずれたりしても、接触は不安定になります。
オムロンの故障解析表でも、接触不良の原因として「接点の摩耗、劣化」が挙げられており、「取り扱い不良による端子ズレや接点ズレ」も原因に含まれています。
この系統は部品そのものの劣化なので、清掃で元の状態に戻すことは期待しにくい原因です。
交換するかどうかは、対象部品の仕様(電気的耐久性・機械的耐久性)と使用条件を確認したうえで判断します。
【3】端子・コネクタ・配線側の接続不良
リレーや接点そのものではなく、電線をつなぐ側に原因があるケースです。
端子ねじのゆるみ、圧着端子の圧着不良、コネクタやソケットの差し込み不足やガタなどがあたります。
オムロンの「リレー 共通の注意事項」では、ソケットのねじ締めが不十分だと接触不良による異常発熱や発火の原因になること、リレーを斜めに抜き差しするとソケットとの接触不良の原因になることが示されています。
なお、接触部分ではありませんが、電線の芯線が一部だけ切れかけている「半断線」も、電線が動くと通電が不安定になるため、接触不良と見分けにくい原因です。
この3つの系統に分けるのは、原因によって対処がまったく変わるからです。
汚れが原因なら清掃で改善する可能性がありますが、摩耗した接点は清掃しても元に戻りにくいです。
端子のゆるみが原因なのにリレーを交換しても、症状は残ります。
「接触不良」とひとまとめにせず、どの系統の不良なのかまで絞ることが、正しい対処への近道です。

オムロンの「リレー 共通の注意事項」には、リレーのトラブルの多くは、使い方や使用条件といった外からの要因で起きると書かれています。
部品だけを見るのではなく、周りの環境(湿気・ほこり・ガス)や使い方にも目を向けると、再発を防ぐ手がかりが見つかりやすくなります。
接触不良はテスターでどう確認する?
テスターでは、無電圧で導通・抵抗を確認し、必要に応じて安全条件を満たしたうえで電圧を確認します。
ただし、一度の導通・抵抗・電圧だけで正常とは判断しません。
ここでは測り方そのものではなく、測定結果をどう判断するかに絞って解説します。
テスターで分かることの違い
- 導通:その瞬間に電気の通り道がつながっていたかを見る
- 抵抗:その測定条件でどれくらい流れにくく見えるかを知る
- 電圧:測定した2点間にそのとき電位差があるかを確認する

今回の実験で使ったHIOKI 3244-60の取扱説明書でも、抵抗・導通の測定では測定回路の電源を切ってから測ること、電圧を入力しないことが示されています。
一度導通しただけでは正常と判断できない
導通測定(ブザーが鳴るかどうか)で分かるのは、「測ったその瞬間、2点の間で電気の通り道がつながっていた」ということです。
接触不良では、接触状態が変化して、つながるときとつながりにくいときが現れる場合があります。
そのため、たまたま状態の良いときに測れば、ブザーが鳴ることがあります。
もう一つ知っておきたいのが、導通ブザーの仕組みです。
導通ブザーは、測った2点間の抵抗が、テスターごとに決められたしきい値より低いと鳴ります。
たとえば、後で紹介する実験で使ったHIOKI 3244-60では、製品仕様で導通ブザーのしきい値が50Ω±40Ωとされています。
ブザーが鳴ったことは「その瞬間の抵抗が、しきい値より低かった」という意味であり、接点がしっかり触れ合っている状態だという意味ではありません。
しきい値は機種によって違うため、使っているテスターの仕様を一度確認しておくと、判断を誤りにくくなります。
間欠的な不具合では、点検や部品の取り扱いの途中で症状が一時的に現れなくなることがあります。
そのため、測定時に正常だったという一度の結果だけでは判断しません。
そこで、一度の結果で「正常」と結論づけず、条件を変えて確かめます。
安全上問題がなく、職場の手順で繰り返し動作の確認が認められている場合に限り、次の確認を行います。
- 同じ確認を何度か繰り返す
- リレーのON/OFFを何度か繰り返したあとにも確認する
- 無電圧を確認したうえで、端子・コネクタ・配線の状態を確認し、そのあとにも確かめる
ここで見たいのは、「一度つながったから正常」と早合点していないかどうかです。
確認のたびに結果が変わった場合も、それだけで接触不良と確定はしません。
その接触部分を原因の候補として、次の章の切り分けで確かめていきます。
リレーメーカーのTE Connectivityの技術資料でも、リレーの接点が正しく動くかを確かめる手順の中で、問題がなくても試験を数回繰り返し、ときどき起きる不良(断続的な不良)がないかを確認するよう示されています。
同じ資料では、取り外しや取り扱いの途中で断続的な不良が消えてしまう可能性にも触れています。

導通ブザーが教えてくれるのは「今、しきい値より低い抵抗でつながっている」ことだけです。
一度鳴っただけで「いつもしっかりつながっている」とは言えません。
回数や条件を変えた確認と、回路のほかの確認結果を合わせて考えてください。
普通のテスターで測った抵抗値には限界がある
ここは誤解が多いところです。
一般的なテスターの抵抗レンジで接点を測ったときに表示される値は、接点の接触抵抗そのものではありません。
表示値には、次のような抵抗がまとめて含まれ得ます。
- テストリード(リード線とリード棒)の抵抗
- リード棒や端子表面の汚れ・油など、接触部分の状態
- ソケットや端子台など、途中の接続部分の抵抗
- 測定用に組んだ配線の抵抗
- 回路に組み込んだまま測った場合は、測る2点の間に並列につながった別の経路
測定器メーカーのFlukeは、一般的なテストリードだけでも0.2〜0.5Ω程度の抵抗があると説明し、ごく小さい抵抗を測るときはリードの抵抗を差し引く機能(REL・ゼロ・Δモードなど)を使うよう案内しています。
また、汚れや油、リードの金属部分に手が触れること、並列の経路なども、測定値に影響するとしています。
低い抵抗を測る場合、一般的なテスターの表示には、接点以外の影響も無視できません。
一方、メーカーがカタログで示す「接触抵抗」は、測り方が決められた値です。
オムロンの用語解説では、接触抵抗を電圧降下法(四端子法)で、接点の定格に応じて決められた測定電流を流して測ると説明しています。
さらに、カタログの接触抵抗値は初期の規格値であり、その大小が実使用での良否を表すものではない、としています。
TE Connectivityの資料でも、接触抵抗は新品のリレーについて規定の電圧・電流で測る値とされ、一般に50〜200mΩ程度と説明されています。
ただしこれはリレーの種類や測定条件によって異なる目安で、テスターの表示値と見比べるための数値ではありません。
電圧降下法とは
接点に決められた電流を流し、そのときの電流と、接点の両端に生じる電圧(電圧降下)を別々の計器で測って、オームの法則(抵抗=電圧÷電流)で抵抗を求める方法です。
電圧は接点の両端で直接測るため、途中の配線などの抵抗を含みにくい測り方です。
つまり、テスターの表示値と、メーカーが示す接触抵抗は、測り方も測っている範囲も違う別物です。
テスターで「0.9Ωだったから正常」「数Ωあるから不良」と、表示値だけで良否を決めることはできません。
さらにTE Connectivityは、一度でも使用したリレーは、開閉による接点表面の荒れやアークの残りかすがあるため、接触抵抗を信頼できる形で測ることはできないとしています。
そのうえで使用済みリレーについては、オーム計(抵抗計)で接点の状態を監視するのではなく、リレーの種類に応じた適切な電圧・電流の条件で、接点が正しく開閉し通電できるかを確かめる機能試験を行うよう示しています。
「カチッと動いたか」を見るだけの確認とは別物で、試験の具体的な条件は対象リレーの仕様によって変わります。
オムロンの用語解説には、接点が表面の膜を介して接触しているとき、接点にかかる電圧がある値以上になると膜が電気的に壊れ、接触抵抗が急に下がる現象(コヒーラ効果)も載っています。
測るときの電圧や電流の条件が違えば、同じ接点でも抵抗の見え方が変わり得る、ということです。
ヨツギの実測|一般的なテスターで接点を10回ずつ測定

以前、ヨツギが測定用の装置を作り、電磁接触器の補助接点、新品のリレー、古いリレーの3つについて、接点を一般的なテスターで10回ずつ測りました。
古いリレーは、エレベーターで20年以上使われていた引き上げ品です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 使用したテスター | HIOKI 3244-60 カードハイテスタ |
| 測定モード | 抵抗測定(オートレンジ) |
| 接続 | ソケット経由で測定 |
| 測り方 | 1回ごとにいったんOFFにしてから再びONにし、接点が閉じた直後の抵抗表示を記録。これを各試料10回繰り返した |
| 古いリレー | エレベーターで20年以上使われていた引き上げ品(型式は不明) |
| リードを短絡したときの表示 | 実験当時の記録なし |
なお、HIOKI 3244-60の取扱説明書では、使用前点検として、抵抗・導通の状態でテストリードを短絡し、0Ω表示になることを確認するよう示されています。
ただし、今回の実験当時にこの確認を行った記録は残っていません。
これから測る場合は、取扱説明書の使用前点検を済ませてから測定してください。
10回分の実測値を見る
※表は左右にスクロールできます
| 回数 | 電磁接触器の補助接点 | 新品リレー | 古いリレー |
|---|---|---|---|
| 1回目 | 1.9 | 1.7 | 5.4 |
| 2回目 | 1.9 | 2.2 | 61.8 |
| 3回目 | 1.9 | 2.2 | 92.8 |
| 4回目 | 1.9 | 1.8 | 115.6 |
| 5回目 | 1.9 | 2.0 | 2.4 |
| 6回目 | 1.8 | 2.2 | 17 |
| 7回目 | 1.7 | 1.8 | 3.4 |
| 8回目 | 1.7 | 2.0 | 1.2 |
| 9回目 | 1.7 | 1.2 | 0.9 |
| 10回目 | 1.7 | 1.2 | 1.2 |
| 表示値の範囲 | 1.7〜1.9 | 1.2〜2.2 | 0.9〜115.6 |
単位:Ω
※今回の測定系で得られた一般的なテスターの表示値であり、接点の接触抵抗の値ではありません。

表示値の範囲は、電磁接触器の補助接点が1.7〜1.9Ω、新品リレーが1.2〜2.2Ωでした。
20年以上使われた古いリレーをソケット経由で測ったところ、毎回OFF→ONした直後の表示値は、0.9Ωから115.6Ωまで変化しました。
115.6Ωという高い表示が出る一方で、9回目には0.9Ωという低い表示も出ています。
8回目と10回目の1.2Ωは、新品リレーの表示値の範囲と重なっています。
しかし、こうした一度の低い表示だけから、接点が正常だったとは判断できません。
今回はソケット経由で測っているため、表示値には、テストリード、ソケット、端子、測定用の配線、接点など、測定経路全体の影響が含まれ得ます。
0.9〜115.6Ωは、あくまで今回の測定系で得られた一般的なテスターの表示値です。
また、この表示値のばらつきそのものを、接触不良の判定基準にすることもできません。
次のようなことは、この結果からは言えません。
- 古いリレーの接触抵抗が0.9〜115.6Ωだった
- 表示値がばらつけば、接触不良と判断できる
- 0.9Ωの回は、接点が正常だった
- 115.6Ωが、接触不良の基準値である
- 新品リレーの1.2〜2.2Ωが、正常な接触抵抗である
- リードを短絡したときの表示値を差し引けば、接点そのものの抵抗になる
- すべての接触不良で、同じような表示値の変化が起きる
この実験の価値は、正確な接触抵抗を測ったことではありません。
一度の抵抗表示だけで接点の正常・異常を判断するのは危険だということを、実物で確かめた点にあります。

今回は表示値が大きく変わりましたが、これは「値がばらつけば接触不良」と判断するための実験ではありません。
0.9Ωのような低い表示も出たことから、一度の抵抗値だけで正常・異常を決められないことを確かめた実験として見てください。
現場では「どこまで正常か」を順番に切り分ける
切り分けの基本は、「ここまでは正常」と確認できた範囲を広げ、正常な区間と未確認・異常な区間の境目を探すことです。
リレーを使った回路では、制御側と負荷側を分けて考えると整理しやすくなります。
まず、症状が出ている状態で「どこまで正常か」を次の順に確認します。
測定結果から次に確認する範囲
※表は左右にスクロールできます
| 測定結果 | 次に疑う範囲 | 次に確認する場所 |
|---|---|---|
| リレーコイルに必要な電圧が来ていない | コイルより前の制御側 | 制御電源、制御信号、コイルまでの配線 |
| リレーコイルに必要な電圧は来ているが、可動部が動かない | コイル側・機械的な動作・リレー本体 | 「電圧がある=リレー正常」とせず、コイル側と可動部の動作 |
| リレーコイルに必要な電圧があり、可動部も動いている | 負荷側 | 負荷側電源、リレー接点、端子・コネクタ・配線、負荷を、実際の回路図や配線経路に沿って確認する |
| 症状中、負荷の入力端子まで必要な電圧が届いていない | 負荷までの途中経路 | 負荷側電源から負荷までの実際の回路経路に沿って、どの区間まで正常かを確認する |
| 症状中、負荷の入力端子まで必要な電圧が届いているのに負荷が動かない | 負荷・負荷内部・別の動作条件 | 負荷故障と即断せず、負荷そのものとほかの動作条件を確認する |
この表は接触不良を確定するためのものではありません。
測定結果から「次にどこを見るか」を決め、正常と確認できた範囲と未確認・異常な範囲の境目を狭めるための整理です。
ここに含まれる電圧確認には通電状態で行う測定があります。
実際に行うかどうかは、必要な教育・作業許可・職場手順・対象設備の安全条件を満たしているかで判断します。
ヨツギの実体験|リレーが動いていても接点まで正常とは限らない
エレベーターの扉は閉まっているのに、次の動作へ進まない。
リレーを見るとクロスバーは引き込まれていて、外からは動作しているように見える――。
これは、私が保守で何度も経験してきた接触不良の一例で、リレーは動いて見えるのに次の動作へ進まない状態でした。
- 扉は閉まっているのに、次の動作へ進まない
- リレーのクロスバーは引き込まれ、外見上は動作している
- 操作コイル端子間には電圧がかかっている
- それでも接点側で信号が止まり、次の機器へ伝わっていなかった

エレベーターの制御回路で、20年以上使われていた制御リレーに起きた故障です。
症状は、ドアが閉まっているのにエレベーターが動き出さない、扉が閉まってこない、次の動作へ進まない、といったものでした。
同じような接触不良のトラブルは、これまでに何度も経験しています。
この症例を知らなかった若手のころは、「リレーは動作しているように見えるのに、なぜ次の動作へ進まないのか」と困惑しました。
テスターで、リレーの操作コイル端子間に電圧がかかっていることは確認できていました。
リレーのクロスバー(コイルに引き込まれて接点を動かす可動部)も引き込まれていて、外から見る限り、リレーは動作しているように見えました。

それでも、接点側の接触状態が悪く、次の機器へ信号が伝わっていませんでした。
これが、動作が止まる原因でした。
同じような故障を経験するうちに、「コイルが動いていても、接点側まで正常とは限らない」と理解しました。
今は、動作しているように見えるのに次の動作へ進まないという症状では、接点側の接触不良も早い段階で疑うようにしています。
リレーの構造から整理します。
リレーは大きく分けて、電磁石として働く「コイル側」と、電気の通り道を開け閉めする「接点側」でできています。
コイルに電気が流れると電磁石になり(これを「励磁」といいます)、可動部を引きつけ、その動きで接点が開いたり閉じたりします。
コイルと接点は電気的には分けられていて、両者をつないでいるのは可動部の機械的な動きです。

「カチッ」という音は、コイルが励磁されて可動部が動いたことを示す手がかりの一つです。
ただし、音がしたことだけでは、コイルにかかる電圧が規定どおりか、リレー全体が正常か、接点が正常か、負荷側へ正しく信号が伝わっているかまでは分かりません。
接点の表面に膜や汚れがあったり、接点が摩耗していたりすれば、可動部が動いていても電気は流れにくくなります。
私が経験した故障も、まさにこの状態でした。
動作表示灯(LED)付きのリレーも同じです。
オムロンの「リレー 共通の注意事項」では、動作表示灯はコイルへの通電を表示するもので、接点の動作にもとづく表示ではないと明記されています。
表示灯が点いていても、それはコイル側への通電を示す情報であって、接点が正常に切り替わったことまでは分かりません。
そのため、リレーの接点不良を確認する方法は、コイル側と接点側に分けて考えます。
リレーのコイル側と接点側
- コイル側:コイルに決められた電圧がかかっているか、可動部が動いているか
- 接点側:接点を通った先に、電気(信号)が正しく届いているか
コイル側が正常でも、接点側の確認が済むまでは「リレーは正常」とは言えません。
反対にリレーが動かない場合は、まずコイルを動かす制御側(コイルに必要な電圧が届いているか、コイル側に異常がないか)から確認します。
オムロンのトラブルシューティングでも、リレーが働かないときは、まず入力電圧がリレーに届いているかを確認する順番になっています。


カチッと鳴ったから、リレーは全部OKだと思っていました。
音は、コイル側が動いたことの手がかりにすぎないんですね。

そうなんです。
音と表示灯はコイル側の手がかり、接点側は「接点の先に電気が届いているか」で別に確かめる、と分けて覚えておくと迷いにくくなります。
正常な場所から異常な場所へ範囲を狭める
リレーを使った回路では、まず「制御側」と「負荷側」に分けて考えると整理しやすくなります。
- 制御側:制御電源 → 制御信号(スイッチやPLCの出力など) → リレーコイル
- 負荷側:負荷側電源 → リレー接点 → 端子・配線 → 負荷
この2つは別の電気回路です。
リレーコイルに電流が流れると、その電磁力で可動部が動き、負荷側の接点を機械的に切り替えます。
コイルを流れた電流が、そのまま接点や負荷へ流れていくわけではありません。
制御側と負荷側が同じ電源から取られている設備もありますが、その場合でも、コイルと接点を別の機能として切り分けて考えることは変わりません。

切り分けの基本は、「ここまでは正常」と確認できた範囲を少しずつ広げ、正常だった場所と異常が出た場所の間に原因を挟み込むことです。
確認の順番は、たとえば次のようになります。
番号は確認する順番を示すもので、1から7まで同じ電流が流れるという意味ではありません。
- 制御電源:制御回路の電源が正常に来ているか
- 制御信号:リレーを動かす信号(スイッチやPLCの出力など)が出ているか
- リレーコイル:コイルに決められた電圧がかかり、可動部が動いているか
制御側が正常だと確認できたら、次に負荷側を確認します。
- 負荷側電源:負荷側の電源が正常に来ているか
- リレー接点:接点を通った先に、電気が届いているか
- 端子・配線:接点から負荷までの端子や配線の途中で、途切れていないか
- 負荷:負荷の入力端子まで電気が届いたうえで、負荷そのものが動くか
症状が出ているときの結果を使って、上の「測定結果から次に確認する範囲」に沿い、正常と確認できた区間と未確認・異常な区間の境目を狭めます。
動いたり動かなかったりする不具合では、症状が出ていないときの測定だけでは問題が見えないことがあるため、「症状が出ている状態で測った結果か」も記録します。
ここで挙げた電圧確認の多くは、通電状態で行う測定です。
通電測定や負荷時測定を行ってよいかは、「初心者かどうか」だけで決めるものではありません。
必要な教育を受けているか、作業許可を受けているか、職場の手順に沿っているか、対象設備について必要な安全条件を満たしているかを確認します。
これらを満たしていない場合は自己判断で測定せず、上司・作業責任者、または必要な資格・教育を受けた担当者へ確認を依頼します。
抵抗・導通測定は無電圧で行う確認として、通電測定とは分けて考えます。
範囲を狭めるときは、次の点もあわせて確認します。
何度か操作して症状が再現するか
安全上問題がなく、職場の手順で繰り返し動作の確認が認められている場合に限り、一度動いただけで判断せず、同じ操作を繰り返して症状の再現性を確認します。
安全上問題がない範囲では、部品を交換する前に症状が出た条件と測定結果を記録しておくと、交換後に何が変わったのかを比較しやすくなります。
動くときと動かないときで何が違うか
設備の動作の順番、扉の開け閉め、特定の操作の直後など、症状が出たときの条件を記録します。
条件に共通点が見つかった場合は、それを次の切り分けの手がかりにします。
ただし、その条件だけで原因を決めず、測定結果や回路上の位置と合わせて判断します。
無負荷では正常に見えても、実動作時に異常が出ることがある
リレーを単体で動かしたり、負荷を外した状態で導通を確認したりするのは、実際に負荷へ電流が流れている状態とは条件が違います。
ほとんど電流が流れていない無負荷状態では、接触部分に抵抗があっても電圧降下が小さく、問題が見えにくいことがあります。
実際に負荷へ電流が流れると、接触部分の抵抗による電圧降下が表れやすくなり、負荷の入力電圧が下がることがあります。
そのため、無負荷で問題が見えなくても、それだけで正常とは判断できません。
ただし、負荷時に電圧が下がっただけで接触不良とは確定できません。
負荷側電源、リレー接点、端子、コネクタ、配線のどの区間で電圧が下がっているのかを切り分けます。
負荷時の電圧測定は通電中の作業です。
必要な教育・作業許可・職場手順・対象設備の安全条件を満たす場合に限って行い、満たさない場合は上司・作業責任者、または必要な資格・教育を受けた担当者へ確認を依頼します。

切り分けでは、「正常と確認できた区間」と「まだ確かめていない区間」を分けてメモしておくと整理しやすくなります。
未確認の区間を、いつの間にか正常だと思い込むのを防げます。
接触不良が見つかったら原因に合った対処をする
接触不良の直し方は一つではありません。
どこで、どの系統の不良が起きているかによって、適した対処が変わります。
原因を確かめてから処置を選ぶ、という順番を守ってください。
※表は左右にスクロールできます
| 原因・状態 | 対処の例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 接触部分の汚れ・異物 | 電源を切り、機器の取扱説明書に沿って清掃する | 分解が禁止されている部品は分解しない。汚れが入り込んだ理由(ほこり・油・ガスなど)が残っていれば再発する |
| 端子ねじのゆるみ | 電源を切り、機器に決められた締め付けトルクで締め直す | 締めすぎるとねじ山をつぶす。変色や焦げがあれば締め直しで済ませず、上司・作業責任者と端子・電線の状態を確認する |
| 圧着端子・圧着部の不良 | 電線に合った圧着端子と工具で作り直す | 見た目がきれいでも内部で圧着不良のことがある |
| コネクタ・ソケットの差し込み不足 | 電源を切り、機器の手順に従って確実に接続する。指定の保持具がある場合は使用する | 差し直しで直った場合は、差し込み不足だったのか接触部の劣化なのかを確かめる |
| 摩耗・劣化した接点 | 設備仕様に適合する部品へ交換する | 清掃では元に戻りにくい。交換の判断は、部品の仕様(電気的・機械的耐久性)と使用条件を確認して行う。交換後は、症状が出ていた条件で繰り返し動作を確かめる |
| 配線の半断線・損傷 | 傷んだ部分の配線をやり直す、または交換する | 動く部分や曲がる部分では、再発しないよう取り回しも見直す |

接点復活剤についても触れておきます。
接点復活剤で改善できるかは、原因・対象部品・使用する製品によって異なります。
少なくとも、摩耗した接点、端子のゆるみ、圧着不良、傷んだ配線の根本対策にはなりません。
一時的に症状が消えたように見えても、原因が残っていれば再発します。
また、オムロンの「リレー 共通の注意事項」では、シリコーンを含む物(シリコーンのグリスやオイル、コーティング剤など)をリレーの近くで使うと、接点に酸化シリコンができて接触不良の原因になることがあると注意されています。
使用する場合は、対象部品のメーカーが使用を認めているか、使用する薬剤の成分が部品に影響しないかを確認し、職場のルールに従ってください。
処置のあとは、症状が出ていた条件で何度か動作を確かめ、再発しないかを見届けます。
処置をしただけで作業を終えないことが大切です。
確認・記録として整理できること
- 症状、再現性、症状が出たときの条件を記録する
- 端子の浮きやずれ、変色・焦げ、コネクタの浮きなど、外観上の異常を目視する
- 職場の手順で認められた範囲で、無電圧を確認して抵抗・導通を測定し、結果を記録する
- 確認した結果を「正常と確認できた区間」「未確認の区間」に整理して報告する
一度復旧しても、そのまま正常とは判断しない
一度復旧しても、そのまま正常とは判断しません。
接触不良の調査では、途中で症状が消えてしまうことがあります。
- 何度か動作させるうちに、症状が現れなくなった
- 点検や部品の取り扱いの途中で、症状が現れなくなった
一時復旧したときの判断
一時的に動くようになっても、原因を特定できたことにはなりません。どの確認・操作の前後で状態が変わったかを記録し、ほかの測定結果と組み合わせて判断します。

症状が消えたことと、原因がなくなったことは同じではありません。
TE Connectivityの資料でも、取り扱いの途中で断続的な不具合が一時的に現れなくなる可能性が示されています。
そのため、症状が消える前後に何を確認していたかを記録し、症状・回路上の位置・ほかの測定結果と組み合わせて次回の切り分けにつなげます。
復旧前後の操作だけで原因箇所を決めつけません。
次回の切り分けに役立つ記録
- 症状:何が起きたか、どのタイミング・操作で出たか
- 測定結果:症状が出ている間に、どこを測り、どんな結果だったか
- 区間:正常と確認できた区間/まだ確認できていない区間
- 復旧前後:何を確認・操作した前後で症状が消えたか
- 再現性:同じ条件で、もう一度症状が出たか
これらを記録しておくと、症状が再現しなくなった場合でも、次回の故障診断・切り分けに役立ちます。
一度不具合が出た部品を必ず交換すると決めるのではなく、再開の判断では、原因が特定できたか、部品の状態、使用条件、安全への影響も確認します。
オムロンの「リレー 共通の注意事項」では、性能が劣化した状態で使い続けると、回路間の絶縁不良やリレー自体の焼損の原因になると注意されています。
使用を続ける場合は、再発時の連絡方法や、次にどこを確認するかもあわせて決めておきます。

一度直ったときほど、「何をしたら直ったか」を書き残しておくことが大切です。
次に同じ症状が出たとき、その記録が原因の場所を絞る一番の手がかりになります。
よくある質問

Q1 リレーがカチッと鳴れば正常ですか?

いいえ。カチッと鳴ったことは、可動部が動いた手がかりの一つです。接点側まで正常とは限りません。
音だけでは、コイルに必要な電圧がかかっているかまでは分かりません。
接点側は、症状が出ているときに接点の先へ必要な電気が届いているかを別に確認します。

Q2 導通があれば接点は正常ですか?

いいえ。一度導通しただけでは正常とは判断できません。
導通ブザーは、その瞬間の抵抗が機器のしきい値より低かったという情報です。
症状の再現性や、回路上のほかの確認結果と組み合わせて判断します。

Q3 接触抵抗は何Ωなら正常ですか?

一律の「○Ω以下なら正常」という基準はありません。メーカーが測定条件や判定値を指定している場合は、その条件に従います。
一般的なテスターの表示値には、テストリードや途中の接続部分などの影響も含まれます。
メーカー指定がない場合は、数値だけで良否を決めず、症状・回路上の位置・再現性と組み合わせて判断します。

Q4 電圧が出ていれば接触不良ではありませんか?

電圧が測れただけでは判断できません。どこで、症状が出ているときに測ったかが重要です。
電圧が測れたということは、測定した2点間で、そのとき電位差が確認できたという情報です。
それだけで、負荷を動かすために必要な電圧を供給できているとは判断できません。
症状が出ているときに負荷の入力端子まで必要な電圧が届いているかを確認します。
ほとんど電流が流れていない無負荷状態では、接触部分の電圧降下が小さく、正常に見えることがあります。

Q5 接点復活剤を使えば直りますか?

原因によります。接点復活剤で直らない原因もあります。
摩耗した接点、端子のゆるみ、圧着不良、傷んだ配線の根本対策にはなりません。
使用する場合は、対象部品のメーカーが使用を認めているか、薬剤の成分が部品に影響しないかを確認し、職場のルールに従います。

Q6 一度復旧したらそのまま使えますか?

いいえ。一度動いたからといって、原因がなくなったとは限りません。
復旧前後の操作と測定結果を記録し、原因・再現性・部品の状態・使用条件・安全への影響を確認します。
原因が分からないまま使用を継続してよいかは、自分だけで判断せず、上司・作業責任者に報告します。

Q7 接触不良と断線は何が違いますか?

接触不良は「触れ合う部分」の接続が悪い状態、断線は「電線や部品内部の通り道」が切れた状態です。
電線が切れかけた半断線は、動かすと通電が不安定になり、接触不良とよく似た症状になることがあります。
症状だけで決めず、どの区間で途切れているかを切り分けます。

まとめ
接触不良で最も避けたいのは、一度動いた・一度導通したという結果だけで正常と判断することです。
症状・再現性・測定結果・回路上の位置を組み合わせて、「どこまで正常か」を順番に確認してください。
この記事で覚えておきたい3点
- 一度の導通・抵抗・電圧測定だけで、正常・異常を決めない
- 制御側と負荷側を分け、「どこまで正常か」で原因の範囲を狭める
- 原因を確認してから、清掃・再接続・端子処置・部品交換などの対処を選ぶ




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