電気設備や機械のメンテナンスの現場に携わっていると、意外なほど電気部品などが故障して機械が不具合を起こす場面に遭遇したことはありませんか?
電気部品の故障の仕方やなぜ壊れてしまうのか疑問に思いませんか?
電気部品が故障してしまうには理由があり、故障してしまうとさまざまな症状の不具合を引き起こしてしまいます。
今回はそんな電気部品についてどんな部品がどのような理由で故障してしまい、どのような不具合を引き起こすのか、故障してしまった時の対応方法や実際にあった事例なども解説します。
- 電気部品の故障の仕方
- 電気部品が故障する理由
- 故障した電気部品の対応方法
- 電気部品を故障しないようにする対処方法
電気部品の故障の仕方
ヨツギが実際に経験したことのある電気部品の故障からいくつかのパターンに分類してご紹介します。
- 接点の接触不良
- センサーのONパンク
- センサーの無反応
- 電磁接触器の接点溶着
- パワーサプライの出力不良
接点の接触不良
接点を持つ電気部品の故障で考えられるのは接点の接触不良です。
接触不良とは接点が閉じた状態での接触抵抗が高くなってしまう状態です。
本来接点が閉じた状態では電気を流しやすい状態であるはずですが、
接点が閉じた状態でも接触抵抗が高い状態となって電気が流れにくい状態になってしまうことです。
接触不良についてはこちらの記事でも解説しています。
接点が接触不良した時の症状
接触不良の状態になってしまうと機械が動かなかったり途中で止まってしまう状態が発生します。
それは、本来接点が閉じた状態は電気がスムーズに流れなくてはなりませんが接触不良を起こした状態では電気が正常に流れないことで機械の制御に異常をきたしてしまうためです。
特に機械を制御しているリレーは複雑な機械を制御するためにいくつも利用されていますが、
これらが接触不良を起こすと機械などの動作の途中で行なっている電気信号がうまくやりとりできないことで動作の途中で止まってしまったり、おかしな動きをひき起こすことがあります。
センサーのONパンク
電気機械には接点を使ったボタンやスイッチ以外にもセンサーを利用したものもありますがこれらのセンサーの故障でONパンクと呼んでいる症状があります。
センサーとはさまざまな状態の変化などに応じて電気信号を出力したり出力を停止したりするものなのですが、
例えば駅のエスカレーターなどの乗り降り口に設置されているもので光電センサーと呼ばれるものがあります。
乗り口で利用者を検出すると止まっていたエスカレーターを動かし、
降り口で利用者の通過を検出すると一定時間後にエスカレーターを停止させたりしています。
ONパンクとはこのセンサーの故障によってセンサーの検出条件に関係なく出力したままになるというものです。
センサーがONパンクになった時の症状
センサーがONパンクすることにとって機械が異常動作することがあります。
例えばエレベーターなどには扉に人が挟まれないようにするための光電管と呼ばれる光線で扉の間にいる人を検出するためのセンサーなどがありますが、
このセンサーがONパンクすると例えば扉の間に人が立っていなくても出力を出し続けてしまうことによって
扉の間に人や障害物があるものと誤検出してしまい扉が閉まらないといった不具合をひき起こしたりします。
センサーの無反応
先ほどはセンサーのONパンクと言って出力が出続ける症状でしたがセンサーの無反応とは
センサーの検出条件を満たしていても電気信号を全く出力しない状態のことでONパンクの時とは違った不具合を引き起こします。
センサーの無反応になった時の症状
センサーが無反応の状態となると機械が本来の動きと違う動きを起こしてしまう不具合が発生し、
とくに機械が本来止まるべきところで停止しないなど機械の損壊や人物の傷害を伴う不具合となることがあります。
先ほどのエレベーターの光電管と呼ばれる扉の挟まれ防止装置のセンサーが無反応となってしまうと、
扉の間に人などがいた場合に本来であればセンサーが電気信号を出力して扉が閉まらないように制御されるはずが
センサーが無反応なことによって電気信号が出力されず結果扉に人が挟まれてしまう危険な状態が発生してしまいます。
電磁接触器の接点溶着
電気機械の電力のON、OFFをコントロールする電気部品に電磁接触器があります。
この電磁接触器が起こす故障に接点の溶着というものがあります。
接点溶着とは電磁接触器の操作コイルの電気を遮断しても接点同士が溶けてくっついた状態になってしまうことで
本来電力を遮断しなくてはいけないタイミングで電力が遮断できない状態になってしまう状態のことです。
電磁接触器の接点溶着した時の症状
接点溶着が発生すると電力が遮断できないことによって機械が動作停止しないなどの不具合を引き起こします。
具体的には機械の制御によってモーターがコントロールされている時に、センサーやリミットスイッチなどで
本来モーターを停止させるべきタイミングで電磁接触器の操作コイルの電源を遮断しても
モーターは停止せずそのまま回り続けてしまい他の装置にぶつかり損傷させるなどの損害を発生させる恐れがあります。
パワーサプライの出力不良
電気機械の制御基盤などの電源として直流の電源が必要な時にパワーサプライと呼ばれる電源装置が使用されています。
そのパワーサプライは故障によって出力不良と呼ばれる症状を引き起こすことがあります。
出力不良とはパワーサプライの出力電圧が電圧不足だったり全く出力されなかったりする状態のことです。
上記写真はパワーサプライが故障していて、出力不足になっている写真です。
出力電圧はDC24Vが必要なところ16V程度しか出力されていません。
パワーサプライの出力不良になった時の症状
出力不良が引き起こされると機械の制御に必要な電圧が不足することとなり
機械の電源はONしないといった症状が引き起こされます。
電気機械などは複雑な制御をおこなうために電子基板を用いて制御を行っていることが多く
その電子基板用の電源電圧が不足してしまうと制御基板が動作しないことにより機械が一切動作しない状態となります。
例えば電気モーターの力で車を移動させて駐車する機械式駐車システムというものがありますが、
この制御を行っているもの電子基板なのでパワーサプライの出力不良が発生すると電源キーをONにしても操作パネルが反応しなかったり操作しても装置が動き出さないといった不具合の発生が考えられます。
電気部品が故障する理由
接点が接触不良する理由
接点が接触不良を起こす理由は接点の使用劣化によるものです。
何年も使用している電気部品がの接点は接点の開閉のたび接点の表面に絶縁性の酸化物が溜まり汚れてきます。
その表面の絶縁性酸化物の蓄積で徐々に接触抵抗が高くなっていきある時に機械の動作に異常が発生するほど接触抵抗が高まり接触不良という不具合を発生させます。
センサーがONパンクする理由
センサーがONパンクすると理由も長年の使用による経年劣化によるものです。
具体的にはセンサー内部に組み込まれた電子回路部分で出力のON、OFFを制御している部品が
劣化して「ショートモード」と呼ばれる故障状態となることで出力制御が常にONの状態に固定されてしまうことで
ONパンクと呼ばれる症状となっってしまいます。
センサーの無反応となる理由
センサーが無反応となる理由は先ほどと同じセンサーの出力を制御する電子回路部分のON、OFF制御をする電子部品が「オープンモード」と呼ばれる故障状態となることで引き起こされます。
この故障状態になるとたとえセンサーの検出条件を満たしたとしても出力をONすることができずにセンサーが無反応に陥ってしまいます。
電磁接触器が接点溶着を引き起こす理由
接点溶着を引き起こす理由は電磁接触器の主接点の摩耗劣化により引き起こされます。
大電力をON、OFF制御するの電磁接触器は主接点を開閉で引きはがすときに発生する「アーク放電」と呼ばれる放電現象が発生します。
アーク放電は高熱を伴った放電現象で徐々に主接点を摩耗させてしまいます。
摩耗が進行した電磁接触器ではより「アーク放電」が発生しやすくなり最終的にはアーク放電によって主接点同士が溶けてくっついてしまいます、これが接点溶着が引き起こされるメカニズムです。
パワーサプライの出力不良になる理由
パワーサプライのパワーサプライが出力不良となる理由はパワーサプライの経年劣化によるものです。
パワーサプライには電源を生成するための電子回路が組み込まれていますが、その回路内に組み込まれた電子部品の経年劣化していきます。
具体的には回路内の「コンデンサ」と呼ばれる電子部品が経年劣化によって性能低下していきます。
コンデンサとは電気の貯水タンクともいうべき電子部品で電気をため込んだり放出したりできる部品ですが長年使用していくとその電気をため込む性能が低下していきます。
そして性能の低下によって出力電圧が不安定となり出力不良をを引き起こします。
実際にあったトラブル事例 2例
リレー接触不良によってエレベーターが故障
現在のエレベーターはマイコンによってコンピューター制御されていて、使用されるリレーも少なくなりましたが、
昔のエレベーターはかなりの数のリレーを用いてエレベーターを自動制御していました。
リレーには1つにつきいくつも電気接点を持っており、そのリレーが多数組み合わせることで複雑なエレベーターの運転を制御しているため、
どこかの接点が1カ所でも接触不良を起こしてしまうとエレベーターが正常に動作しなくなり故障することがあります。
ヨツギもリレーの接触不良によるエレベーターの故障を何度も経験しています。
接触不良を起こしているリレーを交換すればエレベーターは復旧しますが
エレベーターの制御回路はかなり複雑なので接触不良を起こしたリレーの特定にはかなり苦労した記憶があります。
パワーサプライの出力不良で機械式駐車場が動かない
仕事がらエレベーターだけではなく機械式駐車場と呼ばれる、機械の力によって車を移動させる機械式駐車場と呼ばれる機械もメンテンナンスすることもあります。
ある機械式駐車場のトラブルでパワーサプライが故障することがあり、パワーサプライの出力電源がなくなってしまうことで制御している
マイコン基板がダウンしてしまい駐車場が操作不可能になってしまう場面に遭遇したことがあります。
不具合に遭遇してすぐには原因はわかりませんでしたが、操作パネルの電源が入らないことなどから原因を予測して調査したところ
原因はパワーサプライの出力不良であることが分かり、パワーサプライを交換して駐車装置は復旧しました。
故障した電気部品の対応方法
電気部品が故障することは分かったけれど故障してしまったらどうしたらいいの?
基本的には故障した電気部品を交換することで修理ができます。
電気部品が故障してしまった場合は部品交換をすることで、修理することができます。
どのような複雑な機械でも分解してみると一つ一つの部品の組み合わせ出来ており、電気部品も機械を構成する一部品にすぎません。
なので、故障してしまった電気部品を正常な新品の部品に交換することで修理することが可能です。
また、電気部品などはいずれ故障するということを想定して設計されており、メンテナンスによって部品交換をすることが可能です。
電気部品を故障しないようにする対処方法
電気部品が故障しないようにすることはできるの?
電気部品にはそれぞれ寿命があり、いずれ故障してしまいますが
故障する前に交換する方法はいくつかあります。
どんな方法があるの?
予防保全交換といって寿命で故障する前に交換してしまう方法や一部の部品はメンテナンスによって劣化具合を判断して交換の時期を見極めることができます。
電気部品が寿命や経年劣化で故障してしまうのは回避不可能ですが故障を起こしてしまう前に部品交換して機械の正常な状態を保つ手法があります。
その手法に予防保全という手法があります。
リレーを予防保全によって事前交換
予防保全とは部品の寿命などを考慮して部品が故障してしまう前に新しい部品に交換してしまうメンテナンスの手法です。
電気部品には設計上の寿命というものが設定されています。
例えば100万回動作が期待できるリレーがあったとしてその動作回数が90万回を超えたら
部品交換して電気部品の寿命を回復させようといった考え方の手法です。
ただ、リレーや押しボタンみたいな使用頻度の高い部品の動作回数を正確に管理するのは難しく
実際には1日あたりの動作回数を割り出して、その稼働日数からおおよその寿命を割り出す方法が一般的ではないかと思います。
電磁接触器の主接点を点検して交換時期を判断
電磁接触器などは定期的に主接点の状態を目視点検など行うことで交換の時期を判断することが出来ます。
電磁接触器にはカバーを取り外して主接点の状態を目視にて確認できるものがあります。
安全のため主電源を遮断してカバーを取り外すと主接点が見えるようになります、主接点の表面や接点の厚み状況を確認して著しい摩耗が見られる時は交換時期です。
接点溶着してしまう前に部品交換を実施しましょう。
交換に際して型式や接点構成、操作コイル電源などを調査する必要があります、調査のやりかたについてはこちらの記事も参考してみてください。
まとめ
- 電気部品には寿命がありいつか故障を引き起こす。
- 故障を引き起こす理由は経年劣化によるもの
- 故障を防ぐには寿命で故障する前に交換をする
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