エレクトロニクスや電気関連の仕事を始めるうえで、テスターは必須アイテムの一つです。
特に現場で電気の異常診断や電源の電圧確認などを行う際に使用する携帯型の小型テスターは
電気技術者の目で有り、耳であると言えるほど重要なアイテムです。
しかし初心者がテスターをを使いこなすことはそう簡単ではありません、正しく使えているか不安ではありませんか?
それはテスターについての誤解や勘違いなどによって上手く扱えなかったり、使い方がよくわからなかったりするのではないかと思います。
そこで、今回の記事では初心者がテスターを使いこなすために知るべきことや、やってはいけない失敗や、使いこなせるようになるための具体的なトレーニング方法や実際の測定の仕方についても解説します。
テスターを使いこなせるようになると電気技術者としての腕前が1,2段階UPします。そのためにも脱初心者を目指しましょう!!
順番に解説していきます。
テスターを使いこなすために知るべきポイント
初心者がテスターを使いこなすために知っておくべきポイントを4つご紹介します。
- 測定できるものとできないものを知る
- 測定のタイミングを知る
- 測定レンジの選び方を知る
- 測定で当たる端子を知る
順番に解説していきます。
ポイント①測定できるものとできないものを知る。
テスターを使えばどんな電気測定でもできるのかな?
テスターは便利な測定機器ですが、何でも測定できるわけではなく、
測定できることと出来ないことがあります。
テスターは様々な電気的測定が可能ですが、測定ができないものもあります。
携帯型の小型テスターは電圧や抵抗を測定するために使用されますが、一般的に電流は測定できないものがほとんどです。
切換レンジの記号で測定できるものが表記されています写真のテスターでは直流電圧、交流電圧、電気抵抗を測定できます。
ポイント②測定のタイミングを知る
OK、じゃあ早速電圧を測定してみよう
危ないから電源を遮断して測ろうかな。
電源遮断して電圧は測れません、電気測定には適したタイミングがあります!
正確な測定をするためには、測定のタイミングを知ることが重要です。
基本的に電圧は通電中に測定し、抵抗は電源遮断中に測定する必要があります。特に抵抗の測定では、測定する配線を切断する前に必ず電源を遮断してから測定するようにしましょう。
電圧測定
電圧測定は測定する電圧がある状態でないと当然測定はできません、なので電気を遮断せず測定をします。電源ならブレーカーがONしている状態です。
注意したいのは負荷などの電気機器などの電源電圧を測定したい時などはその電気機器に電源が供給されている状態で測定するということです。
どういうことかというと、電源ではなく負荷の場合は電気回路上の接点(スイッチ)などによって、回路が遮断されている場合は電圧が発生しないので測定は出来ません。
抵抗測定
抵抗の測定は必ず電源を遮断して行います、ブレーカーをOFFした状態で測定します。
なぜ、電源を遮断した状態でないといけないかというとテスターの仕組み上抵抗レンジで測定する際は当たった端子を電気的に接続してしまうため、電源投入中に測定すると電源ショートしてしまうためです。
通電中に抵抗測定はテスターで一番やってはいけないこととして、電気技術者としては常識なのですが、初心者は誤って測定してしまいがちです。
当たる端子が悪いと地絡して漏電ブレーカーをトリップさせてしまったり電子基板などを壊してしまう恐れもあります。
失敗例でも解説しますがヨツギも地絡をしてしまい、大失敗をしてしまいました。
ポイント③測定レンジの選び方を知る
測定タイミングも合っているのにうまく測定できないよ。
測定レンジが合っていないと正しく測定できなません
電圧測定なら測定対象が直流か交流か理解して自分で合わせる必要があります!
テスターは当たった端子の電源を自動判断して測定してくれるわけではありません、測定したい対象に合わせて自分で切り替えが必要です。
測定対象の値に応じて適切な測定レンジを切り替えする事で始めて正確な測定を行うことができます。
測定レンジを間違えてると正しく測定できないばかりか、ポイント②で説明した抵抗測定を電源を遮断していない状態でしてしまい機器の故障させるなどの失敗が考えられます。
テスターには測定レンジごとにマークが表記されいて測定したい対象に合わせて選択します。
測定したい対象例 | 測定種別 | 測定レンジのマーク |
コンセント電圧など
|
交流電圧 | |
バッテリー電圧など
|
直流電圧 | |
接点、スイッチの動作
|
電気抵抗 |
次のような測定を行う時はどのレンジを選択するべきかをいくつか紹介します。
コンセントの電源の測定
家庭用コンセントの電源電圧は交流の100Vです、一部エアコン用コンセントなどは電圧が200Vですがいずれも交流電圧です。
単相ブレーカー、三相交ブレーカーの測定
単相ブレーカー、三相ブレーカーなどは商用電源と呼ばれる電源でどちらも交流電圧です。
電気機器の電源電圧の測定
電気機器の電源電圧測定はその電気機器の使用電源を調べる必要があります。見分け方はACと表記が有れば交流で、DCと表記が有れば直流です。
テスターのレンジ選択の表示のように記号で表記されている場合もあります。記号と電源種別を覚えておきましょう。
表記 | 記号表記 | 電源種別 |
AC | 交流 | |
DC | 直流 |
バッテリーや電池などの電源電圧の測定
バッテリー、電池などの電源電圧は直流電圧です。
パワーサプライの出力電圧の測定
パワーサプライとは直流電源装置とも言いますので出力端子は直流電圧です。
電気接点(スイッチ)などのON、OFF動作の測定
接点(スイッチ)の動作確認を行いたい時は抵抗レンジで測定します。
接点(スイッチ)が閉じている(ON)時は抵抗値が0Ωに近くなり、接点(スイッチ)が開いている(OFF)時は抵抗値が無限大やOL「オーバーレンジ」(測定範囲外)になります。
電線同士のつながりの測定
電線同士のつながりがわからない時などは抵抗レンジで測定します。測定値が0に近い測定値ならその電線同士はつながりがあるということになります。
断線チェックの測定
本来繋がっているはずの電線が切れていないかを確認するにも抵抗レンジで測定します。抵抗値が0Ωに近ければ電線の繋がりは問題なく、抵抗値が高かったり無限大やOL「オーバーレンジ」(測定不能)だと断線していることになります。
ポイント④測定で当たる端子を知る
測定レンジもあってるし、測定タイミングも間違っていないけど、
やっぱりうまく測定できないなー。
測定で当たる端子を間違えていると正しく測定できません、
測定したい機器ごとに当たるべき端子を知っている必要があります。
正しい測定をするためには、測定で当たる端子を知ることが大切です。
測定する対象によって適した端子が異なります。端子を誤った場所に接続すると、誤った測定値が表示されたり測定できなかったりします。
上記の写真は単相ブレーカーの電圧測定の様子ですが、赤丸の端子が測定するべき端子でリード棒を当てて正しく測定できています。
具体的な失敗3例
電気の初心者がテスターの測定でしてしまいがちな具体的な失敗例を解説します。
- 測定で当たる端子を間違えて正しく測定できていない
- 電圧の測定を抵抗レンジで行なってショートさせた
- 測定レンジを間違えて正しく測定できない
失敗例①測定で当たる端子を間違えて正しく測定できていない
これはテスターの使い方をまだ覚えていない後輩にテスターを使わせてみて実際にあったことなのですが、テスターのリード棒を間違えた端子に当たって測定をしていました。
テスターの使い方を覚えて使いこなすようになるとまず間違えないようなことでも、知識がない初心者の頃は当然のように失敗します。
こればかりは知識と経験を積むしかありません、正しく当たる端子を覚えて実践しましょう。
- 測定で当たるべき正しい端子を覚える
- 正しい測定を何度も行い経験を増やす
失敗例②電圧の測定を抵抗レンジで行なってショートさせた
これはヨツギ自身も経験がありますが、抵抗レンジで電源が投入されている回路を測定してはいけないということがあまりわかっていなかった頃、
練習のつもりで現場での測定をした時にうっかり電源が入ったままの回路を抵抗レンジで測定してしまいました。
端子とリード棒が触れた瞬間にバチッと火花が散ったと思った瞬間、部屋の照明も消えてしまいました。
何で部屋の照明まで消えてしまったかはその後に解りましたが、テスターのリード棒を通じて電源が地絡してしまい建物の分電盤で漏電ブレーカーがトリップしていました。
当初は顧客にもご迷惑をお掛けしてしまいました。
- 抵抗の測定は電源を遮断して行う
- 正しい測定を何度も行い経験を増やす
失敗例③測定レンジを間違えて正しく測定できない
これも若かりし頃に失敗した覚えがあります。会社で支給されていた小型テスターはデジタル式のものでしたが、
テスターの扱いに慣れていない頃デジタルというだけで、なんかハイテクなものと勘違いして電気の測定も自動的に切り替えやらをやってくれると勝手に勘違いしておりました。
そんなわけはないんですが、デジタルの表示で何かしらの表示は出るもんですから
なんとなく測れているのかなっと勘違いしていて先輩には測れていないことを指摘されて測定レンジを合わせる事を覚えました。
- 測定レンジの正しいやり方を覚える
- 正しい測定を何度も行い経験を増やす
使いこなせるようになるための具体的なトレーニング方法
初心者がテスターを使いこなすためには絶対的に練習が必要ですが、どうやってその練習するか具体的で有効なトレーニングについて独断と偏見で提案します。
- 身近なもので測定を行う
- 測定の前にどの様な測定結果が出るか予測する
- 測定の結果が正しかったか答え合わせをする
- まだ測定したことがないもので繰り返し測定する
トレーニング①身近なもので測定を行う
テスターを使いこなせる様になりたい!
テスターを使いこなせる様になるにはどうしても経験が必要です。
でも、失敗してトラブルになったら嫌だしなー。
そこでおすすめの方法があります。
測定の経験を積むために必要なことは、測定をたくさん行うことですがいきなり実地でやるには失敗のリスクもあります、そこでお勧めの方法が身近なものでテスターを使って測定を行うことです。
具体的には乾電池などが身近で安全な測定対象です。
アルカリ単三乾電池の電源種別は直流電源で電圧は1.5Vです。
測定する電源種別と電圧が分かっていますから実際に測ってみましょう。
トレーニング②測定の前にどの様な測定結果が出るか予測する
ここがポイントですが測定前に測定結果後どう出るかを予測しましょう。
自分の考えでどうなるかを考えることで経験としての質が上がります。
先ほどの乾電池であれば電圧は「1.5V」が出るものと予想します。
では実際に測定してみましょう。
上記の写真は実際にアルカリ単三乾電池を測定してみたところです。
予想「1.5V」に対して「1.597V」という測定結果になりました。
トレーニング③測定の結果が正しかったか答え合わせをする
測定結果が正しかったかを必ず答え合わせしましょう。
実際の測定結果が正しい結果かを確認しなくては間違ったやり方だったか正しいやり方だったかが分からないので経験として身につきません。
先ほどの測定結果をかんがえてみましょう、予想「1.5V」に対して「1.597V」という測定結果でした、これは異常なのか正常なのか答えを考えます。
結論としては正常です、新品で消耗していない乾電池は公称電圧よりも高い状態であるのが正常です。
もう1つ測定してみましょう。
上記写真は別のアルカリ単三乾電池を測定してみたとことです。
測定結果は「1.468V」で、良く見ると「-」(マイナス)の表示もあるので正確には「-1.468V」という測定結果です。
これについて考えてみますと、まず「-」(マイナス)が出たのは前回の測定と比べて当たるテスターのリード棒の赤リード棒と黒リード棒が逆になっています。
そのため乾電池のプラス端子から何Vなのかを測定したことになり乾電池のマイナス側はプラス側から見ると数値としてマイナスになるので「−」(マイナス)の表示となっています。
また、測定値が「1.5V」より低い「1.468V」になっていることについては、アルカリ乾電池の特性で消耗している乾電池は公称電圧よりも低くなるということがあります。
測定の結論としてはリード棒を逆に当たったため「−」(マイナス)表示となり、測定したアルカリ乾電池は消耗しているため電圧が低くなっているということがわかりました。
こう言ったことは、実際に体験してみないとなかなか経験として蓄積されません、知ってるつもりでも、やってみると意外な発見などがあるものです。
トレーニング④まだ測定したことがないもので繰り返し測定する
一度測定したことがあれば次からは自信を持って測定することが出来ます、
身近なもので十分練習したら少しずつやったことないものの測定をこなしていきましょう。
くれぐれも抵抗レンジで電圧測定だけは行わないように気をつけましょう。
電圧測定だけであれば、間違えた端子を当たったとしても測定が出来ないだけで
ショートや機器を壊してしまう可能性は有りませんのでどんどん測定の経験を積みましょう。
可能であれば会社の先輩などにみてもらいながらだとやってはいけないことなどアドバイスが貰えると思います。
まとめ
- テスターで測定できるものと出来ないものがあることを知る
- 測定にはタイミングがあることを知る
- 測定レンジの合わせ方を知る
- 測定で当たるべき端子を覚える
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